市営交通のあゆみ番外編

HISTORY EXTRA EDITION

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リリーカードからユリカ、そしてマナカへ

「市営交通100年祭」PRパートナー
NPO法人名古屋レール・アーカイブス

名古屋市営交通に限らず公共交通機関に乗るのに必要な乗車券。
今回はリリーカードからユリカ、そしてマナカへと繋がるカードタイプの乗車券の変遷です。

リリーカード編

さてそのカードタイプ乗車券ですが、現在のマナカ(manaca)と同じ大きさ、形状のカードタイプは1988(昭和63)年3月1日発売開始、同年4月1日使用開始の「リリーカード」が最初でした。参考までに「リリーカード」とは名古屋市の花であるユリを意味する英語「リリー (lily) 」に由来しています。
もっとも当初は自動券売機で乗車券を購入する現金代わりのプリペイドカードで、地下鉄は購入した乗車券で乗車することが出来たのですが、市バスにはそもそも乗る(使う)ことが出来ませんでした。その意味ではこの時点でリリーカードは乗車券とは言えません。
その後1989(平成元)年10月2日、まずは市バス基幹1号系統(栄~鳴尾車庫)でのテスト実施からリリーカードによる市バス料金の支払いが始まります。
そして1991(平成3)年10月1日からは、全ての市バスでリリーカードは『乗車券』となりました。

さて上のリリーカードは1989(平成元)年の発行で、下は1997(平成9)年の発行。

こちらは1989(平成元)年の発行のリリーカードの裏面。

1997(平成9)年の発行のものには、市バスで使えることが条件付きながら明記されています。ここにある「対キロ料金区間」とは、市バス黒川11号系統(黒川~北部市場)の愛知県西春日井郡豊山町にある「北部市場」バス停で乗り降りする場合のみ適用された、市バス唯一の「対キロ料金」があったためで、2002(平成14)年10月12日からそれは解消されています。

これはこの区間が名鉄バスと市バスとの並行路線であったことから、運賃体系を名鉄バスに合わせたことによるもので、市バスにとっては特例の扱いであり、よもやリリーカードの裏面にそうした歴史が残されているとは思ってもみませんでした。
余談ですが、市バスが現在のような均一料金となったのは1973(昭和48年)4月1日のこと。それまでは区間制料金で、因みに私が暮らしていた町から栄までは3区でした。そんな中、平成の時代まで均一でない区間があったこと自体に驚きです。

ところでリリーカードはオリジナルの印刷が可能で、様々な記念券だけではなく、こうした結婚記念の挨拶状代わりに使う人もいました。

リリーカードで忘れてならないのはこの記念券。1998(平成10)年発行の「名古屋都市交通100年記念 パノラマカード・リリーカードセット」。

パノラマカードはリリーカードの名鉄版で、それがリリーカードとセットというのが味噌。
実は名古屋市交通局が、他の鉄道事業者とコラボしたきわめて珍しい“乗車券”なのです。「名古屋都市交通100年記念」という節目の年だっただけに成立したのかも知れませんが、なかなかやるなあとは今更ながらの感想です。

それ以前、名古屋鉄道、近畿日本鉄道、JR東海との4社共同企画「なごや記念きっぷ」なども発行されたりしていましたが、カードタイプは結局、後にも先にもこの1種類だけでした。

参考までに4社共同企画「なごや記念きっぷ」。
平成7年5月8日発行のなごや=758の語呂合わせきっぷ。

ユリカ編

1998(平成10)年5月6日導入のユリカ。恐らく皆さんにはリリーカード以上に馴染みのあるカード。このユリカの登場でリリーカードは終焉を迎えました。
さて写真の2枚のユリカの違いは何?と大上段に構えなくともご存知の方は多いかと思いますが、下のカードには「トランパス」の文字が入っており、名古屋鉄道との共通乗車システムに対応しているカードであることが分ります。
なおトランパスのスタートは2003(平成15)年3月27日です。
ここで名前の「ユリカ」の解説。名古屋市の花「ユリ」と、「有利なカード」に由来しており、例えばこの2枚のカードは、5000円で5600円に達するまで乗車可能な文字通り「有利なカード」でした。
またユリカはストアードフェアカード(SFカード)と呼ばれるもので、地下鉄であれば駅に設置された対応する自動改集札機に通すことで乗車駅と下車駅を特定し、料金を引き去ります。市バスでは乗車時に料金を引き去っていました。

2003(平成15)年からのデザインで、この5600円のものは私が間違いなく一番多く購入したタイプ。

2011(平成23)年2月10日に販売が終了したユリカですが、末期にはカメラ付き携帯電話の普及によるQRコード付きも存在し、時代の流れを感じさせます。

ところでユリカの裏面には乗車日時と乗降区間が印字されています。
最上段は「Y」月7日13時42分。さて「Y」月って何月?
答はX=10月、Y=11月、Z=12月で、ここでは11月7日に2回乗ったことが分ります。

一般の方にはあまり馴染みがなかったかも知れませんが、こうした地下鉄・市バスのそれぞれに昼間割引のユリカもあり、それぞれにこども専用もありました。

ユリカもリリーカード同様、様々な使い方をされておりこちらは成人式での記念品。

ところで使用済みのユリカがどうなったかと言えばベンチになりました。(写真は亀島駅)

今も現役で使用されていますので、見かけたら一度座り心地をお確かめ下さい。ごく普通のベンチです。10年以上前に作られたものですが、しっかりしています。もっともそうでなければ困りますが…。
そう言えば地下鉄の使用済み「紙製磁気式乗車券」はトイレットペーパー等に100%リサイクルしているとか聞いたことがあったのですがそちらはどうだったのでしょう?

マナカ(manaca)編

時代はいよいよ交通系ICカードの時代に突入。
元は2001(平成13)年11月18日に始まったJR東日本のSuica(スイカ)。

名古屋市交通局では2011(平成23)年2月11日、マナカ(manaca 以下、マナカと表記)が誕生しました。そしてそれは、日本で初めて利用料金に応じてポイント加算が出来る交通系ICカードでした。

ウェブサイト《名古屋市交通局 HOME > お問い合わせ > よくあるご質問 > その他》から転載。

●マナカの名前の由来を教えてください。
*「日本の真ん中をつなぎ、くらしの真ん中をつなぐICカード」。
日本の真ん中のこの地域の事業者が手をつなぎあうことで利便性を向上し、乗車券としてだけでなくお買い物にもお使いいただける、くらしを便利につなぐICカードとして、覚えやすく親しみやすい名称としました。

さてマナカですがあまり説明することはないかも知れません。
ただ今の使い勝手になるまでには若干の歴史があります。

まずは2012(平成24)年4月21日のTOICA(トイカ)との相互利用スタート。
●TOICA=「Tokai IC Card(東海ICカード)」の頭文字をとって名付けました。
 ※JR東海ウェブサイトから転載

この時の記念TOICAと記念マナカのデザインは2枚で一つなのですが、知っている人は意外と少ないかも?私も3社の記念ICカードを購入し、並べてみて発見。

次に2013(平成25)年3月23日のマナカが全国で使えるようになった時。

これでマナカが交通系ICカードの全国相互利用サービスを使えるようになり、その利便性は格段に広がりました。

ところでマナカとそれまでのユリカの決定的な違いは何でしょう?
それは定期券であっても、現金をカードにチャージしていれば電子マネーとして使えること。例えば定期券の区間外の駅を利用する場合に、該当する料金がチャージ金額の範囲内であれば、わざわざ乗車券を買うことなくマナカからの引き落としで、地下鉄・市バスを利用できるようになったことです。
今や誰もそれを便利だとは思っていないでしょうが、当初は「世の中は進歩した」と感動ものでした。

最後に敬老パス。これもマナカです。

今年/2022年の2月1日から名鉄、JR東海及び近鉄の各鉄道の市内運行区間、名鉄バス及び三重交通の路線バスの原則市内運行区間でも使えるようになったのは有り難いことですが、敬老パスがマナカになったのは2016(平成28)年9月1日からとそれほど昔のことではありません。因みに筆者は敬老パスが使えるようになってからは、常に現金チャージを欠かさずしており、全国どこでも交通系ICカード全国相互利用サービスエリアでは、(通常のマナカとして)いつも敬老パスを使っています。
時に駅の窓口で精算する必要のある状況もあったりしたのですが、その度に駅員さんはこの大胆なゴールドカードに目を見開いてくれるので、それはそれで楽しい時間でもあります。
もっともカードの右上に「IC CARD」の表示があるので、残念ながら「名古屋市交通局のマナカです」と言った説明をする機会には恵まれませんでした。
話しはそれますが、全国の自治体にこうした敬老パスのような制度はあるのでしょうか?

*札幌市…敬老優待乗車証
*仙台市…敬老乗車証
*東京都…シルバーパス
*横浜市…敬老特別乗車証(敬老パス)
*その他

などなど開始年齢、収入、費用負担などの条件は様々ですが、名古屋市と同様の制度は各所にあります。またICカードを導入(もしくは今後導入予定)している自治体もあります。ただこれらほとんどの自治体と名古屋市では決定的な違いがあります。それは名古屋市の敬老パスがマナカ(交通系ICカード)であること。
名古屋市の敬老パスは現金をチャージしていれば電子マネーとして、買い物も出来れば、交通系ICカード全国相互利用サービスエリアであれば公共交通機関も使えるという優れもの。私は駅のホームの交通系ICカード対応自動販売機で飲料を買うこともしばしば。実際に使ってみたからその利便性が分ります。名古屋市民もあまり知らない敬老パス/マナカの話題でした。
なお名古屋市以外では福岡市の「福岡市交通用福祉ICカード」が福岡市交通局の「はやかけん」で、敬老パス同様に使うことが出来ます。

新たなステージへ→これからも、街をむすぶ。人をつなぐ。新たなステージへ→これからも、街をむすぶ。人をつなぐ。