市営交通のあゆみ番外編

HISTORY EXTRA EDITION

この記事をシェアする
  • Twitter
  • Facebook
  • LINE

駅を彩るパブリックアート

「市営交通100年祭」PRパートナー
NPO法人名古屋レール・アーカイブス

名古屋市営地下鉄の駅ナカはパブリックアートに溢れている。
弊会調べで恐縮ですが、駅を彩るパブリックアートの数は、日本の鉄道事業者では恐らく日本一。
そう言われてもピンとこない方が大多数でしょう。地下鉄を毎日使っている方でも然りです、ということで今回は市営地下鉄駅ナカパブリックアートの魅力に迫ります。
※パブリックアートとは…公共空間のための芸術・文化作品(公益財団法人 日本交通文化協会の定義)
 以下、パブリックアート=アートと表記します。

お勧めアート1 桜通線瑞穂区役所駅

ではどんなアートがあるのでしょうか?まずはその1例を見てみましょう。

駅の改札を入り直ぐの場所にあります。
タイトルは「四季の旅 “Journey Through The Seasons”」。作家は三塩英春氏。それではアートで四季を旅しましょう。

一番手前は「春」。桜が咲き乱れ、山裾を流れる雲が穏やかな時間を演出しています。
伝統的な日本画の世界のような味わいがあります。

夕立でしょうか?夏の力強さを感じます。
この中を笠と合羽の旅人が歩いていればそこは歌川広重の世界感。

息を呑むほど美しい日本の秋。

そして冬。

雪景色の中を蒸気機関車が引く列車が走っている。
色があるにも関わらずまるで水墨画のような雰囲気さえ漂っています。

そして冬の終わりには春の兆し(きざし)が繋がっています。

もうお分かり頂けるかと思いますが、このアートは春夏秋冬の季節(とき)が重なりながら過ぎゆき、また春へと連綿と繋がっていく様を描いています。
1994年(平成6年)3月30日の桜通線今池駅~野並駅間の開業と同時に公開されました。

お勧めアート2 桜通線名古屋駅

桜通線名古屋駅と東山線名古屋駅を結ぶ通路。
「地下鉄沿線名所風景」(モダンアート会/矢橋六郎)は名古屋の地下鉄のパブリックアートで2番目の歴史があります。

地下鉄工事の様子が描かれており、地上を市電が走っています。

1957年(昭和32年)11月15日に開業した現在の東山線名古屋駅~栄駅間の工事は、まだまだ機械化されておらずこうした人海戦術に頼る面もあったということでしょうか?

お勧めアート3 桜通線吹上駅

吹上駅南改札口を入って直ぐ。
「PLEASE DO NOT RUN」(ウイリアム・マクエルチュラン(カナダ))

この作品の面白さは平面ではなく立体であること。

なんとなくお分かり頂けるでしょうか?
平面とは違う、立体彫刻とも違う3Dアートとでも言えば良いのでしょうか?
このアートの解説には「そんなに早く走らないで・・・」以下、含蓄のある言葉が書かれていますが、茶化すつもりはないものの設置されている場所が場所だけに、「駆け込み乗車はお止め下さい」と思ってしまった。

お勧めアート4 桜通線桜山駅

桜山駅の改札口を出て、桜山交差点方面に歩き始めて直ぐ。
タイトルはその名もずばり「桜」(稲垣進一)。
華やかな金屏風の世界。

金屏風を開けると…。
名古屋市電で、1940年(昭和15年)から1948年(昭和23年)まで運転されていた「急行」が描かれています。壁画(アート)で学ぶ名古屋市営交通の歴史。

この他、地下鉄のアートの魅力を語り始めればきりがないので筆を置きますが、以下の駅にアートはありますので、その中にこれから利用する駅があれば是非、目を向けて下さい。

参考:パブリックアート所在駅

どこにあるのか探すのも楽しいものです。みなさんもぜひ探してみてください。
東山線…名古屋駅、池下駅、本山駅など
名城線…矢場町駅、久屋大通駅、栄駅など
鶴舞線…庄内通駅、丸の内駅、伏見駅など
桜通線…国際センター駅、高岳駅、車道駅など

こちらはスウェーデン/ストックホルム市の地下鉄駅のパブリックアート。動物園のオブジェではありません。
世界を見渡せば、駅ナカアートはかなりの確率で存在します。

台湾/新北市の鉄道、淡海軽軌緑山線崁頂駅のホーム。台湾の絵本作家、ジミー・リャオ(幾米)氏のアートが市民の目を楽しませています。

名城線久屋大通駅のアート。

こうした芸術を日々見られる名古屋市の地下鉄。名古屋市が予算を付けて整備したものではなく、全て地元企業や学校等による寄贈で、名古屋市は場所を提供しています。文化に対する理解がなければこうした展示が行われることはありません。駅に限らず「パブリックアート」という視点で世界を見れば既に100年近い歴史があるようです。
それでも公共の場である地下鉄駅にアートを設置しようと思いついた交通局の担当者には、今更ですが拍手を送りたいと思います。

新たなステージへ→これからも、街をむすぶ。人をつなぐ。新たなステージへ→これからも、街をむすぶ。人をつなぐ。